![灯籠が並んでいる高山寺参道入口](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/07/2022-07-21_15-00-53_438_resize-1024x768.jpg)
京都の観光スポットといえば清水寺、南禅寺など華やかな東のエリアがどちらかというと有名ですが、実をいうと西のエリアは、見どころ満載の穴場なのです。少しアクセスが不便なこともあり、足を運ぶ人が少なく、とても静かで時には貸切状態で国の宝を鑑賞できる機会もあります。
栂尾山高山寺、高雄山神護寺、槇尾山西明寺の三尾三山と称され、歴史あるお寺とその周辺をめぐります。
自然豊かで、まるで霊界にトリップしたような気分に浸れる名エリアです。
紅葉の名所ですので秋には混み合いますが新緑の夏は涼しく過ごしやすいので、気軽なハイキングコースでもあります。
※さらに、西日本ジェイアールバスは2021年3月より高雄・京北線の京都市内均一運賃区間を拡大しました。京都駅から栂ノ尾まで従来は530円だったバス運賃が大幅値下げでたったの230円アクセス可能になりました。加えて京都市交通局と連携し、市バスと共に「バス一日券」「地下鉄・バス一日券」利用できるようになり、一層便利になりました。
散策ルート
栂尾山・高山寺(とがのおさん こうざんじ)
三尾のお寺の中で一番北に位置しています。
高山寺の歴史
創建は奈良時代の8世紀。
その後一時廃寺になりましたが、1206年に明恵上人が後鳥羽上皇の勅願で名を高山寺として開山しました。明恵上人は華厳宗を繁栄させ、皇族、公卿、武士の要人及び民衆から広く信仰を集めて高山寺には数多くの文化財が集積されていきました。以後学問の寺として発展していきます。
鳥獣人物戯画をはじめ国宝8点、重要文化財約1万点が所蔵されていて、貴重な文化財の宝庫となっています。
※京都国立博物館に寄託されているものがあります。
境内は1994年に世界文化遺産に登録されています。
アクセス
〒616-8295
京都市右京区梅ヶ畑栂尾町8
電話番号
075-861-4204
- JR京都駅からJRバス高雄・京北線「栂ノ尾」「周山」行で約55分(途中、四条大宮・二条駅前・円町などを経由)、栂ノ尾下車。
- 京都市営地下鉄四条駅(四条烏丸)から、市バス8系統で約50分、栂ノ尾下車。(途中、地下鉄太秦天神川駅を経由)。
※栂ノ尾バス停近くに市営駐車場があります。50台(無料)11月のみ有料。
※嵐山高雄パークウェイは有料道路です。営業時間8時〜20時(季節によって変更あり)。
拝観時間
8:30~17:00
石水院 拝観料
800円
※秋期入山料500円
![長い階段の続く高山寺表参道](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/07/2022-07-21_14-58-02_149_resize-1024x768.jpg)
「栂尾山 高山寺」の石碑です。富岡鉄斎(1837-1924)によるものです。
![富岡鉄斎筆の栂ノ尾山高山寺石碑](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-21_14-58-35_145_resize-768x1024.jpg)
受付がありますが人はいません。
紅葉の季節以外、入山は無料です。
かつては立派な楼門があったそうですが明治時代に焼失し、残念ながら再建はされていません。
現在はその場所に石灯籠があります。
![高山寺境内入り口の石碑](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/07/2022-07-21_15-00-18_514_resize-1024x768.jpg)
参道には美しい正方形の石敷きが17枚連なっています。
※悲しいことに2019年に襲った台風で樹齢100~300年のスギやヒノキが次々と倒され御本尊の金堂も半壊するなど数々の深刻な被害を受けました。クラウドファンディングなど活用して修復がなされてきました。
![北山杉と参道に並ぶ石碑](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-21_15-01-29_268_resize-768x1024.jpg)
真っ直ぐに天まで突き抜けるような北山杉が不思議な幻想的な空間を作り出しています。
薄曇りで霧がかっていますが空気が澄んでいて霊界の入り口のよう。
この時間の訪問者は私一人で、ここが貸し切りなのですから贅沢な時間です。
![突き抜けている沢山の北山杉](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/07/2022-07-21_15-01-37_609_resize-1-1024x768.jpg)
石水院(国宝)
国宝とは国が指定した重要文化財のうち、世界文化の見地から価値の高いものとして選ばれ指定されたものです。
(さらに焼失・倒壊などで一度失われたものは忠実に再生されても不可という貴重なものです。)
石水院は明恵上人時代唯一の遺構で、鎌倉時代の寝殿造り(中央の寝殿を取り囲む対屋を渡殿で結んだ平安中期成立の貴族の建築様式。)風の建築として伝わっています。
![栂ノ尾高山寺の石水院入り口の山門](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/07/2022-07-21_15-03-47_844_resize-1024x768.jpg)
受付を済ませ、書院の廊下を進んでいくとお茶席が設けられていて、有料にて(600円)お抹茶とお菓子をいただくことが出来ます。
![茶室](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/07/2022-07-21_15-07-29_525_resize-1024x768.jpg)
渡廊をまっすぐ進みます。
![石水院の拝殿へ向かう縁側](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-21_15-08-05_476_resize-1024x768.jpg)
廂の間(ひさしのま)
西側である春日明神・住吉明神の元拝殿には善財童子の像が置かれています。善財童子とは明恵上人が敬愛した法華経に登場する子供で、智恵を得る菩薩です。
その背面に明治の文人画家、富岡鉄斎89歳晩年の作品、「石水院」の木額が掛けられています。
![廂の間に飾られた善財童子の像](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/07/2022-07-21_15-08-28_177_resize-1024x768.jpg)
![開け放たれた明るい寝殿の和室](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/07/2022-07-21_15-17-01_379_resize-1024x768.jpg)
白光観音尊が安置され、床の間には国宝「明恵上人樹上座禅像(写し)」の掛け軸があります。
![](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-21_15-10-27_952-768x1024.jpeg)
![](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-21_15-10-53_739-1-768x1024.jpeg)
南に面する長押し(なげし)には後鳥羽院直筆といわれる勅額が掛けられています。「日出でて先ず照らす高山の寺」寺号の由来となっています。
![後鳥羽上皇直筆の額](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-21_15-16-55_970_resize-768x1024.jpg)
鳥獣人物戯画
平安時代後期〜鎌倉時代作、作者不詳。甲乙丙丁4巻。
ガラスケースには歴史の教科書でおなじみの高山寺を代表する宝物(写し)が公開されています。
動物たちの遊戯をキュートなタッチで描いてあります。究極の日本漫画の前身のような気がします。
![鳥獣人物戯画(甲巻)の写真](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/image-1.png)
高山寺公式HPより
真夏だと言うのにオープンエアーの爽やかな涼しさです。
虫の鳴き声はしたはずなのですが、景色と溶け込んで不思議にとっても静かに感じました。
額縁の中の絵のようです。
![石水院の庭の景色](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-21_15-11-59_476_resize-1024x768.jpg)
ずっとここに座って遠い山の濡れた新緑を眺めていたい気分です。
![石水院からみた山の景色](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-21_15-12-50_275_resize-1024x768.jpg)
借景が美しい南側の景色です。紅葉の頃は拝観客でいっぱいでしょうからこんなに落ち着いてお庭を眺めることができるのはこの季節の特権かもしれません。
![石水院の山と空と青々と茂る木々](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-21_15-12-17_931_resize-1024x768.jpg)
書院と石水院との間のお庭に池があり、渡廊で結ばれています。
![石水院の灯籠と池のある中庭](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/07/2022-07-21_15-15-03_411_resize-1024x768.jpg)
高山寺 御朱印
御朱印は書院で石水院の拝観券を求める時に申し込んでおくと帰るまでに書き上げてもらえます。
![栂ノ尾山高山寺の御朱印](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/goshuin_kouzanji-768x1024.jpg)
日本最古の茶園
高山寺は日本ではじめてお茶が作られた場所とも言われています。
栄西禅師から贈られた茶種を明恵上人が栽培し、宇治へと伝わったそうです。
修行の妨げとなる眠りを覚ます効果があるので衆僧にすすめたといいます。今でいうカフェインの効果がみとめられていたのですね!
中世以来、栂尾の茶を本茶、それ以外を非茶と呼ぶそうです。現在こちらの茶園は、5月中旬に茶摘みが行われます。
毎年11月には献茶式も行われます。
![日本最古の茶園と書いた石碑](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/07/2022-07-21_15-21-29_285_resize-768x1024.jpg)
明恵上人御廟
明恵上人の墓所です。
奥の覆堂の中には古い五輪塔が収められてあります。
奥には重要文化財の、一石から造られている如法経塔(にょほうきょうとう)、左手には高山寺型と呼ばれる最古の石塔、宝篋印塔(ほうきょういんとう)もあります。
供養塔や墓碑塔などに使われる仏塔の一種で共に鎌倉時代のものです。
これ以上は進めなくなっています。心静かに手を合わせました。
![明恵上人の御廟](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-21_15-30-48_562_resize-1024x768.jpg)
仏足石(ぶっそくせき)
御廟を右手に見て、左の細道に入ると簡素な覆いの下に仏足石があります。
![仏足石](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-21_15-28-07_054_resize-1024x768.jpg)
お釈迦様の足跡をかたどり礼拝の対象としたものだそうです。
![釈迦の足跡](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-21_15-28-25_491_resize-1-1024x768.jpg)
金堂
もとの本堂の位置に建てられています。1219に完成した本堂は、室町時代に焼失し、現存の金堂は江戸時代1624〜1644年の間に御室仁和寺真光院から古御堂(桃山-江戸期の建物)を移築したものだそうです。
オリジナルは檜皮葺、五間四面(5 つの柱間を持ち、4面にひさしが付いている。)のお堂で、運慶作の「丈六盧舍那仏」(るしゃなぶつ)を安置していたそうです。
現在の屋根は銅板葺と言われる銅板を用いた金属製です。
御本尊は釈迦如来像。
![高山寺金堂](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-21_15-25-33_551_resize-1024x768.jpg)
側には鎮守社があり、春日明神が祀られています。
![](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-21_15-26-23_928_resize-768x1024.jpg)
開山堂
明恵晩年を過ごした禅堂院の跡地に立ちます。建物は室町時代に兵火をうけて焼失しますが、江戸時代に再建されました。現在、法要や献茶式はこの開山堂で営まれることが多いです。鎌倉時代の重要文化財で木造の「明恵上人坐像」(みょうえしょうにんざぞう)が安置されています。
![高山寺開山堂](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-21_15-32-21_622_resize-1024x768.jpg)
帰りは裏参道を降りていきました。石水院を覆う低い白壁づたいに緩やかな坂道を降りていきます。
![石水院の白い外壁](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-21_15-36-01_484_resize-1024x768.jpg)
吾妻屋「間雲亭」
![](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-21_15-36-49_747_resize-1-1024x768.jpg)
駐車場・バス停が近いので、表参道よりもこちらのほうが利用しやすいかもしれません。
![](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-21_15-37-55_375_resize-1024x768.jpg)
道中は一木一草をそのままに。なるべく手を入れていないそうです。あるがまま自然の美しさで「花は野にあるように」という利休の教えそのものですね。
![裏参道の階段 つづれ織り](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-21_15-38-53_611_resize-1024x768.jpg)
裏参道を降りるとすぐ駐車場とJRバスの栂ノ尾停留所があります。バスを待つのも良いですがあまり本数がありません。西明寺はここから徒歩11分、神護寺は徒歩22分ですのでハイキングにちょうど良い距離です。
![JRバスの栂ノ尾バス停留所と駐車場](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-21_15-41-11_114_resize-1024x768.jpg)
次は神護寺の方角へ向かいます。
朱塗りの高雄橋が緑に映えます。下を流れる清流は清滝川です。
![清滝川と高雄橋](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-21_16-52-20_874_resize-2-1024x768.jpg)
高雄観光ホテル
神護寺の麓にあるホテルです。
京都の奥座敷とも言われる高雄の川床が楽しめます。もちろん宿泊も出来ます。
紅葉の時期を除いて代表的な川床の貴船よりも空いています。
清滝川の川風で、中心街より5度は涼しく、価格も比較的お安くいただけますので夏は穴場ですよ。
アクセス
〒616-8292
京都市右京区梅ヶ畑高雄町5番地 神護寺上がり口
電話番号
075ー871-2991
- 京都市営地下鉄四条駅(四条烏丸)より市バス8番系統、「高雄」バス停下車、徒歩約20分。
- JR京都駅よりJRバス高雄・京北線乗車、「高雄」バス停下車、徒歩約20分。
- JR山陰線「嵯峨嵐山駅」からタクシーで約15分 。
- JR山陰線「花園駅」からタクシーで約20分。
- 地下鉄東西線「太秦天神川」からタクシーで約20分。
![新緑の高雄観光ホテルの川床](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-21_15-52-58_307_resize-1-1024x768.jpg)
![高雄観光ホテル川床座席](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/takao_yuka-1.webp)
![清滝川の河原に出された川床の座席](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/takao_yuka2.webp)
![高雄観光ホテル食事メニュー](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-21_15-52-30_069_resize-2-1024x768.jpg)
高雄山 神護寺(たかおさん じんごじ)
高野山真言宗の遺迹(ゆいせき)本山です。遺迹本山とは、真言宗の開祖である弘法大師・空海が住まいとした場所を指す言葉だそう。
高野山真言宗の別格本山という寺格です。平安時代前期から鎌倉時代にかけての芸術的価値において第一級品に目される国宝17点、重要文化財2833点を所蔵しています。
5月初旬の「宝物虫払い」行事で、主要なものが順次展開されます。
アクセス
〒616-8292 京都市右京区梅ヶ畑高雄町5
電話番号
075-861-1769
- 国道162号線を、「福王子」交差点から「京北 高雄」方向へ約6km。
- JR京都駅からJRバス「高雄・京北線」で約50分、「高雄」下車、徒歩約20分。
- 阪急京都線烏丸駅・地下鉄烏丸線四条駅から市バス8号系統で約45分、「高雄」下車、徒歩約20分。
拝観料
大人600円
小学生300円
神護寺の参道入口に着いたのは閉門と言われる午後4時5分前でした。
余裕だと思って周辺の写真なんか撮ってる場合じゃなかった!!
4時までに受付通らなきゃいけないのに、この階段の数と言ったら絶望的でした。
![高雄山神護寺参道入口](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-21_15-53-41_200_resize-1-1024x768.jpg)
楼門まで続くこの石段を駆け上がりました。その数、なんと350段以上!!
訪問される方は、ソフト登山、とにかく階段が沢山ありますのでご覚悟ください。
![神護寺の果てしなく続くような階段](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-21_15-55-46_128_resize-1-1024x768.jpg)
![神護寺の楼門へと続く階段](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-21_16-41-10_901_resize-1024x768.jpg)
息せき切って4時ジャストにようやく到着、受付の方にハアハア言いながら(コロナ渦の迷惑客)まだ大丈夫でしょうか、とたずねたところ、
「5時には門が閉まりますからね、かわらけ投げの方はもう売店が閉まってしまいましたので。」
と優しく返答頂きました。
「5時なら全然余裕です。」
と拝観券を買い求め、お礼を言って境内へ。
立派な楼門があるのですが現在は修繕中でした。
紅葉の季節には美しく復活し、その姿をお披露目してくれることでしょう。
![神護寺楼門入り口](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-21_16-39-57_260_resize-2-1024x768.jpg)
楼門をくぐると視界がひらけます。その敷地は約6万坪だそうです。
![神護寺境内入り口](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-21_16-03-12_289_resize-2-1024x768.jpg)
神護寺の歴史
どのお寺の歴史も面白いですがこの神護寺もとってもドラマチックな歴史をたどっています。
神護寺の始まりは古く、もとは奈良時代から平安時代初期にかけて平安京造営にも尽力した高級官僚の和気清麻呂が建立した私寺で、愛宕(あたご)五坊の一寺(山岳修行のための道場)として高雄山寺と呼ばれていたそうです。
802年(延暦21年)に最澄が招かれて法華会(法華経の講演)が行われ、空海は809年に神護寺へ入山以降14年間この地にとどまり、真言宗立教の基礎を築きました。
その後、天長元年(824)に、やはり清麻呂が河内に建立していた神願寺を高雄山に移し、高雄山寺と合併しました。
そうして誕生したのが「神護国祚真言寺(じんごこくそしんごんじ)」略して「神護寺」です。
「神護国祚真言寺」とは、「八幡神の加護により国家鎮護を祈念する真言の寺」 という意味です。
(清麿が称徳天皇の勅命で派遣され神託を受けたのが宇佐八幡宮でした。)
空海とその弟子によって整備が進められました。
その後、神護寺は二度の災害により、そのほとんどを焼失し、平安末期には衰退してしまいます。
再興に尽力したのが文覚上人。後白河法皇や源頼朝もそれを援助しました。
さらに時は過ぎ、応仁の乱の兵火によって焼失。
江戸中期に再興されましたが、明治の廃仏毀釈によって寺域が解体され、支院・僧坊は焼失。
1935年(昭和10年)になって、金堂、多宝塔が再興され旧堂も修復されています。
和気清麻呂の霊廟
![朱塗りされた和気清麻呂の霊廟](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-21_16-03-07_714_resize-1-1024x768.jpg)
境内には清麻呂の墓所もあります。
![和気清麻呂公墓道の石碑](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-21_16-03-25_389_resize-1-768x1024.jpg)
多宝塔
多宝塔内には、国宝の「五大虚空蔵菩薩」が安置されています。
日本史の教科書でもおなじみの国宝「伝源頼朝像」は神護寺から現在京都国立博物館に預託されていますが春には里帰りして一般公開されています。近年は像主・成立時期などをめぐって論争が続いているそうですが貴重な国の宝であることには変わりありません。
![神護寺の中にある多宝塔](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/tahoto.webp)
金堂へと上がるこの階段もかなり急です。紅葉が色づくのが楽しみですね。
![金堂へと続く階段](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-21_16-21-57_129_resize-2-1024x768.jpg)
金堂
1934年(昭和9年)に実業家山口玄洞の寄進で建てられました。
御朱印はこの中の受付でいただけます。
![金堂の正面](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-21_16-36-33_735_resize-1-1024x768.jpg)
ご本尊は薬師三尊。
撮影は出来ませんが蓮台まで一木造りで平安彫刻の見事な檀像です。
![金堂のアップと賽銭箱](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-21_16-08-33_490_resize-3-1024x768.jpg)
神護寺 御朱印
達筆でとっても美しい御朱印。7月限定の青葉紅葉バージョン500円也。
8月からは蓮バージョンに変わります。
![高雄山神護寺の青もみじバージョンの御朱印](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/goshuin_jingoji-768x1024.jpg)
鐘楼(京都府指定文化財)
神護寺鐘楼は1623年(江戸時代)の建立です。楼上の釣り鐘である梵鐘(ぼんしょう)は、875年(貞観17年)に鋳造されたもので国宝です。
日本三名鐘の一つで、高さは150cm、直径は80cm、重さは900kgあります。
序詞(じょことば)は橘広相(たちばなのひろみ)が、銘文は菅原道真の父、菅原是善(すがわらのこれよし)が、そして揮毫(きごう)は藤原敏行(ふじわらのとしゆき)による銘文が刻まれています。
序・銘・書の技芸にすぐれる当代一流の人物の手によることから「三絶の鐘」と称されました。
「姿(形)の平等院」、「声の園城寺」、「銘の神護寺」「勢の東大寺」とならび称されている名鐘です。
※残念ながら一般公開はされていません。
![京都府指定文化財の鐘楼](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-21_16-04-33_437_resize-2-1024x768.jpg)
秋には真っ赤に色づく有名な景色。青もみじも清々しく綺麗です。
![青もみじが沢山の神護寺境内景色](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-21_16-07-12_708_resize-1-1024x768.jpg)
大師堂
建立は桃山時代(1573〜1674)
大師堂は空海の住房だった「納涼房」を復興したもので板彫弘法大師像(重要文化財)が安置されています。
毎年紅葉の季節に特別公開されます。
この板彫弘法大師像は、1302年(正安4年)に仏師・定喜が土佐国金剛頂寺の空海像を模刻したものとされている貴重なもの。
歴史の教科書で見るようなものを実際に見られるのはワクワクしますね。
![重要文化財の大師堂](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-21_16-20-14_863_resize-2-1024x768.jpg)
五大堂
金堂の階段を降りたすぐ下にあります。平安時代の天長年間(824-834)に淳和天皇の勅願により建立され、五大明王像や不動明王などを祀ります。現在の建物は京都所司代・板倉勝重による1623年頃の再建です
![神護寺の中にある五大堂](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-21_16-19-41_464_resize-3-1024x768.jpg)
かわらけ投げの名所へ向かいます。
![かわらけ投げの場所](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-21_16-28-18_539_resize-1024x768.jpg)
![神護寺境内の階段](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-21_16-27-59_525_resize-1024x768.jpg)
かわらけ投げ
滝川渓谷は紅葉の名所として知られ、このあたりは錦雲峡(きんうんけい)と呼ばれます。この雄大な自然に向けて疫病退散や魔除けなどの願いを込めながら素焼きの皿を投げるのが「かわらけ投げ」です。
![錦雲渓の景色](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-21_16-26-35_981_resize-2-1024x768.jpg)
全国のかわらけ投げの発祥の地がここ神護寺なんだとか。
![錦雲渓と清滝川に向けてかわらけ投げをする場所](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-21_16-25-46_621_resize-1024x768.jpg)
かわらけ投げは今ですと、環境云々で問題になりそうですが、すぐに土に戻る素材で作られているとのことで安心です。
![錦雲渓の展望台](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-21_16-27-07_194_resize-2-1024x768.jpg)
指月橋(しげつきょう)
次の目的地へと向かいます。
神護寺から清滝川を上流へ、高雄方面に進むと、美しい朱塗りの指月橋があります。
西明寺へはこの橋を渡ります。
![朱塗りの指月橋](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-21_17-08-36_531_resize-1024x768.jpg)
槙尾山 西明寺(まきのおさん さいみょうじ)
西明寺の歴史
平安の初期、824年に神護寺の別院として空海の高弟である智泉大徳が創建した西明寺(さいみょうじ)。
その後荒廃してしまいましたが、1700年に桂昌院(五代将軍・徳川綱吉の生母)の寄進によって再建されました。
本堂では国の重要文化財に指定されている千手観音立像と釈迦如来立像が安置されています。
アクセス
〒616-8291 京都市右京区梅ヶ畑槇尾町1
電話番号
075ー861-1770
- JR京都駅よりJR山陰線(別名:嵯峨野線)〜花園駅下車、タクシーで約18分。
- JRバスJR京都駅前乗り場(中央口よりすぐ)で乗車、槙ノ尾で下車(約50分)し、「槙ノ尾」バス停より徒歩5分。
- 京都市バス8番で、烏丸四条~四条大宮~天神川~福王子を経由、高雄で下車、約1時間。「高雄」バス停より徒歩10分。
※専用の駐車場はありません。
ここでタイムアップとなってしまい中の拝観は叶いませんでしたが、また紅葉の季節にじっくりと訪れたいと思います。
![西明寺山門](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-21_17-07-21_342_resize-1024x768.jpg)
なるたきのそら(パン屋)
ほっと一息、周山街道沿いにある可愛いパン屋さんの紹介です。
![なるたきのそら(パン屋)入り口](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-22_14-36-03_382_resize-1024x768.jpg)
アクセス
〒616ー8256
京都市右京区鳴滝松本町2ー1
周山街道 三宝寺バス停下車 高雄方面へ徒歩2分
電話番号
075ー755ー1430
営業時間
夏季営業時間(9月まで)
木曜日 13:00〜16:00
金・土曜日 11:00〜19:00
10月からの営業時間
木曜日 13:00〜16:00
金・土曜日 11:00〜18:00
パン屋さんなのにきゅうりの粕漬けや沖縄もずくを販売している興味深いお店です。
お惣菜なども置いていたり、明るいオーナーさんの人柄もあってご近所の奥様の憩いの場であり、賑やかでした。
![なるたきのそら お惣菜の看板](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-22_14-36-45_077_resize-768x1024.jpg)
![なるたきのそら パンメニュー](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-22_14-36-49_184_resize-1-768x1024.jpg)
お店はログハウス風のとっても可愛い内装です。
![なるたきのそら 内装](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-22_14-55-21_877_resize-768x1024.jpg)
今月晴れて一周年を迎えるそうでオーナーさんも笑顔。
「身体に良いものを作りたい。」という想いから、極力添加物を使わない、安心安全をモットーにパンの具材にもこだわっているそうです。
パンの発酵はとっても繊細で季節やちょっとした気温の差によって変わりますが、形、味すべてにこだわったパン作りをされています。時にはお客様のお家まで謝りに行くこともあったそう。
只今自称を除いたイケメンの男性アルバイトを募集中だそうです。
![なるたきのそら 女性オーナー](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-22_15-00-52_441_resize-1024x768.jpg)
手作り感満載のふかふかパンが所狭しと並んでいます。
![なるたきのそら いろいろな種類のパン](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-22_14-58-39_410_resize-1024x768.jpg)
どのパンもふわふわで美味しいです。キャラブキチーズパンなど、変わり種のお惣菜パンもあります。
![棚に所狭しと並ぶ、全粒粉パン、シフォンケーキ、菓子パンなど](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-22_14-58-42_619_resize-1024x768.jpg)
いづみ谷 西寿寺
次は「京都地検の女」や「子連れ狼」、「水戸黄門」、「信長のシェフ」など枚挙にいとまがないほどのドラマや時代劇のロケ地になっている美しい右京の小寺、西寿寺を紹介します。
![西寿寺の境内](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-22_15-22-32_142_resize-1-1024x768.jpg)
住所
〒616-8253
京都市右京区鳴滝泉谷町16
電話番号
075ー462ー4851
アクセス
- 京都駅から市バス26番「山越」行にて「福王子」下車徒歩7分 。
- 京都駅からJRバス「周山」行にて「福王子」下車徒歩7分 。
- 京阪三条駅から市バス10番・59番「山越」行にて「福王子」下車徒歩7分。
- 四条烏丸駅から市バス8番「高雄」行にて「福王子」下車徒歩7分。
- JR山陰線「花園駅」よりタクシーで7分。
西寿寺の歴史
西寿寺は泉谷山という山号をもつ浄土律・捨世派のお寺です。捨世派というのは、世俗を離れて戒律を守り静かにお念仏をする僧侶集団のことだそうです。西寿寺は開山以来、念仏三昧道場として多くの人々の念仏修行の場でした。
江戸時代初期(1628年)、浄土宗の高僧・岱中良定上人を開山として、霊地・泉谷に開かれました。
西寿寺の本堂を建立するときに、山をを造成したところ、
太陽と星と月が彫られた三光石が現れました。その下から泉が湧き出したことからお寺の山号を泉谷山と名付けられました。
現在も清らかな清水を湧き出しています。
参道手前に駐車場もあります。
![西寿寺の駐車場](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-22_15-17-33_210_resize-1024x768.jpg)
こぢんまりとしていますが美しい山門があります。植木の刈り込みも見事です。
![西寿寺の門](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-22_15-28-42_071_resize-1024x768.jpg)
門をくぐるとそこには別世界が広がっている??ような雰囲気です。
![西寿寺の山門](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-22_15-19-53_621_resize-1024x768.jpg)
お掃除が行き届き、整えられた美しい石畳の参道をすすみます。
![西寿寺の参道石畳](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-22_15-20-18_294_resize-1024x768.jpg)
さらに階段があります。このお寺は高台にありますので階段の数は多いですが緩やかです。
![西寿寺の本殿まで続く石の階段](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-22_15-20-45_909_resize-1-1024x768.jpg)
振り返ってみると京都の町を見下ろせます。
![境内から見た景色](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-22_15-21-38_341_resize-1024x768.jpg)
綺麗にお手入れされた生け垣です。これだけの植木の管理をするのは大変なことです。
青もみじがあり、少し色づいたものもあります。秋には美しい紅葉が見られるでしょう。
![京都が一望できる境内からの景色](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-22_15-21-29_074_resize-1024x768.jpg)
階段を上がりきって正面に閑静な佇まいの本堂があります。防犯の観点から公開はされていませんので通常は締め切られています。
ご本尊の阿弥陀如来は約352年前に現在の滋賀県甲賀郡甲南町の新宮大明神の本地仏を御遷座された平安末期のもので、身の丈は約3mもあります。
こう見えて、阿弥陀如来像のプロジェクションマッピング法要やZOOMを用いたリモート法要などもチャレンジされている近代的なお寺でもあります。
今日は境内を拝観してひっそりとお参りして帰ることにしましょう。
![西寿寺の本殿](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-22_15-21-50_307_resize-1024x768.jpg)
一般公開はされていませんが、泉のささやきこと、水琴窟(手水鉢の近くに設けられた地中の空洞の中に手水鉢の排水を落とし、その音が地上に聞こえるように設計された日本庭園の装飾の一つ。)があることでも知られています。(護摩木を奉納することにより予約者限定で見ることもできるようです。お抹茶とお菓子付き。)
境内入り口の東にある鐘楼。
![西寿寺の境内にある鐘](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-22_15-21-47_007_resize-1-1024x768.jpg)
境内西端の三重石塔(さんじゅうせきとう)があります。
傍らには墓地へと続く階段があります。
![三十石塔のある西寿寺の境内](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-22_15-22-06_648_resize-1024x768.jpg)
三光石神社(さんこうせきじんじゃ)
階段をあがってみるとお社がありました。
冒頭の三光石を御神体として祀る山光石神社です。
御祭神は天照大神をはじめとする八百万の神で、ご利益はボケ封じ。まさに高齢化社会の現代にタイムリーな神社です。
![三光石神社のお堂](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-22_15-24-01_005_resize-1024x768.jpg)
さらに登っていくと見晴らしが良く京都市内が一望できます。
![西寿寺の墓所からの見晴らしの良い景色](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-22_15-23-11_811_resize-1024x768.jpg)
ここは墓地なのですが展望スペースも設けられています。
![西寿寺の墓所の展望台](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-22_15-23-13_878_resize-1024x768.jpg)
このお寺では樹木葬も受け入れられています。ペット供養や、さらにペットと入れるお墓なんかもあります。
こんな見晴らしの良い美しい場所でのんびりとあの世暮らし出来るのが理想なのかも知れません。
さらに高い場所まで上がってみました。絶景かな。
![さらに高い位置からみた京都市内の景色](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-22_15-25-19_038_resize-1024x768.jpg)
![西寿寺墓所からの帰り道](https://ettyy.com/wp-content/uploads/2022/08/2022-07-22_15-26-38_001_resize-1024x768.jpg)
結びに
京都市右京区は私が学童期を過ごした場所です。
長いこと忘れていたけど小さい頃から当たり前のように古いものに囲まれていて、歩けば国宝にあたるくらいの生活でだったのです。
子供はありがたみを何も感じてなかったけど(笑)。
東山区からこの地域に越してきたのですが、当初は交通の便も悪く、ただの田舎だと思っていました。
それは辺りに風致地区が多くあり、むやみに開発できないことから、大切に守られてきた自然だったのです。
歴史あるお寺も同じ時期にすべてが出来あがったものではなくて、一時は焼けたり、廃寺になっていたりした由緒ある場所に後の世代が復興して、積み重ねた今があり、古いものを大切につないでいっていることが感じられました
東京に住んでいると次々と目新しいものが建ちならび、目まぐるしいほど流行に出会うことができるけど、故郷に帰ると時間がゆっくり流れていて、京都の歴史の底力と奥深さを再認識することが出来ました。
華々しい観光地も良いですが、機会あれば、少し回り道をして季節ごとに移り変わる色とりどりの京都を楽しみながら洛西の古刹を散策してみてはいかがでしょうか。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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